≪映画感想文≫ ロストケア

 

投稿者:グッビオのオオカミさん

  

 

【映画『ロストケア』2023年3月24日(金)全国ロードショー】

https://lost-care.com/

 

今日は、近所の映画館で『ロストケア』を観に行きました。

 

長尾和宏医師のブログでえらくオススメだったので、気になっていたのです。

 

 

『あらすじ』

【訪問介護サービスに勤務する介護士、斯波宗典は利用者にもその家族にもよく気が付き、同僚にも親切な優秀で信頼の厚い職員。

ある日、早朝に民家でそこに住む老人と、訪問介護センターの所長とが死体で発見される。

検事の大友秀美は捜査の過程で、斯波が務める訪問介護センターの利用者の死亡率が他の訪問介護センターと比べて異様に高く、また死亡する時間帯や曜日にかたよりがある事を発見し、斯波が勤務してから40人以上の高齢者が死亡している事を突き止める。

斯波を取り調べ、真相を明らかにしようとする大友。

すると斯波は犯行を認め言う『私は救った』と。

検事、大友には施設に預ける認知症になった母親がいる。大友は検事として斯波と対峙する中で、いつしか一人の人間として斯波の告白と犯行に戸惑う。

斯波の告白に語られたのは、社会的サービスではまかない切れない介護をする家族と、認知症の進行により自分で自分をコントロール出来なくなった高齢者の過酷な現実を知る事になる。

法の正義と、社会制度の条件と限界、斯波の体験的な信念との間で検事・大友は葛藤をしつつ自分自身と向き合う…。】

 

私自身が高齢者向け通所介護サービスの介護職員なので各描写を「あ〜、あるある」と思って観ていた部分もありました。

 

 

しかし、ドラマに描かれていたのはその先にある、老い、病、死、孤独と家族、生活や仕事と各個人の歴史と人生。死ぬ事と生きる事の尊厳とは何かという問題でした。

 

 

 

 

以下は私個人の体験談になります。

 

私は最初に母親が脳出血で倒れ、その母親が退院してから直ぐに父親が脳出血を起こし相次いで入退院を繰り返した時期がありました。

 

同じ家に両親が二人とも車椅子だった時期もありました。その後、母親は三度目の出血で施設に入所となりました。

 

施設に入所になった母親に東京に住む兄の子(私の甥、母にすれば当然"孫")の誕生日が明日だと伝えると「そうか!じゃあケーキ買って、持って行ってあげよう(笑)!」と満面の笑みで言う母。

 

そのマヒした身体でどうやって大阪から東京に行く気?

 

孫を可愛がる優しいままの母の人格が残っている分だけ、そんな事も分からなくなってしまった母親の変わり様がとてもショックでした。

 

しかし家に残った父親も脳出血の後遺症で片側麻痺が進みます。

 

自宅の中は常に尿臭がしてとれない毎日を過ごした事もありました。

 

家内と交際し始めたのはこの時期でしたが、そんな状況で「結婚しよう」とは言えず、別れました。

 

つらかったですね、施設入所を拒否した父親。

 

自宅で車椅子に乗りオヤツを食べつつ時代劇を見る父親の姿が憎かった覚えがあります。

 

父親が施設に入所した時に、何年も経ってからよりを戻し、結婚した経緯があります。

 

運良く(?)面会制限の厳しいコロナ禍になる前に両親を見送る事が出来ました。

 

 

そんな個人的な諸々の介護の体験もまた、この映画を視た時に思い出しました。


↓(スポンサーリンク)↓



コメント: 10
  • #10

    おてんば (土曜日, 15 4月 2023 18:55)

    グッビオのオオカミさん、先ほど、映画「ロストケア」の鑑賞をしました。
    良い映画のご紹介をありがとうございました。
    いろんな地獄があるものですね。
    孤独な介護、国の支援不足、国民の無関心が介護地獄の過酷さを増しています。ご家族の他にも、ご近所、訪問看護、訪問リハビリ、訪問ヘルパー等の、あらゆるサービスを取り入れて分担して介護者が働ける社会を作るべきですね。
    このような映画で高齢者介護の問題が世間に認知されるようになり、お互い様の精神で助け合って幸せに最期を迎えられる社会を作りたいです。
    映画鑑賞後、仕事を頑張ろうと思えました。

  • #9

    グッビオのオオカミ (木曜日, 13 4月 2023 12:08)

    ここまでのコメントは全て読ませて頂いてます。
    実際に家庭内の介護はタイムカードも退職もないし、組織内の分業もないのでそれが非常につらいですね。仕事でやってみて分かったのは、そこです。
    託児所みたいなもので「すべて家族がやる」ばかりが全てでは無いし、核家族化してるからこそ育児同様に介護もまた現役世代の就労の足かせになっているのが実態だと思います。
    育児は(これも大変ですね)まだ年齢によって成長もするし、将来につながるという希望もあります。
    ただ、高齢者の介護はいつごろどうなるかなど先行きが全く分からないし、本人も家族も認知症などはコントロール不可能な部分が確実に残ります。

    原作もあるとの事でちょっと興味も持ちました。
    俳優陣も質が高く、検事と介護士との対話のドラマに緊張感あふれるいい映画ですね。

  • #8

    ジョニーK (火曜日, 11 4月 2023 13:04)

    映画観てきました。朝一の高齢者多い時間帯にもかかわらずエンドロールで席を立つ人が居ないのに驚きました。近くではずっと泣いてる人も居たりと。全編を通して考え続ける内容になってました。
    私の父親が闘病の末に亡くなるまでの最期の1年間はかかる電話も返信もせず突然の別れとなりました。
    最後にぶつかって決別とはあんまりな仕打ちをしたと思います。

    松山ケンイチさんのラジオ宣伝で知りこの紹介を読んだ一押しで観てきました。
    この映画を広く知ってもらいたいですね。


  • #7

    SATOSHI (火曜日, 11 4月 2023)

    「ロスト・ケア」原作を読み映画も見ました。映画は少し原作と違っていたが、見ごたえが有り面白かったです。

    これをきっかけに原作者の葉真中顕氏を読んでおります。

    「灼熱」という物語が有るのですか、こちらもお薦めです。戦時中のブラジルのお話です。かなりの長編で難しいが、今の日本を見ると興味深いストーリーです! 是非。

  • #6

    通りすがり (火曜日, 11 4月 2023 01:05)

    父の没後、介護士さんから生前の父の様子を尋ねると、「外出がしたい。何度も、尊厳死についてどう思いますか。」と父に尋ねられ、「尊厳死なんて難しい言葉、分からねくて随分と難しい事を考えているお父様だと思いました。」とのこと。
    このまま、今後、面会も制限され、外出も出来ずに施設内だけの生活で終わりたくないという簡単な話が通じなかったのです。
     グッピオのオオカミさんのような方に介護して頂ければ、随分と現状のやるせなさが軽減されたと思います。というか、どんな会話が展開されたかと思うと、叶わぬ妄想ですが明るい気持ちになります。
     映画鑑賞の趣味はないのですが、せっかくですので、時間を作り観に行きたいと思います。

  • #5

    あるでぃー (月曜日, 10 4月 2023 21:30)

    投稿を読み、この映画はぜひ観ておきたいなと思いました。感情を揺さぶられそうなので一人で見に行こうかな。

    私も一昨年より、実家のダブル介護を通いでしていました。グッビオのおおかみさんのご経験と心境には共感するところが多々ありました。介護サービスもフルで活用していましたが到底及ばず。結局、母は在宅介護で、急速に介護が必要となっていった父は施設に入居となりました。
    しかし、介護付きの民間老人ホームに入れてホッとしたの束の間、認知症による夜間せん妄が問題となり、入居一週間で精神病院の認知症科での一時入院を勧められました(そうしないと退去)。そこからは「介護難民」よろしく、認知症病棟、特養(ここも夜間せん妄で2ヶ月で退去。医師が鎮静薬を過剰投薬しかえってせん妄悪化。)、最後の砦となった高額な介護医療院と転々としました。
    予想もしていなかった展開に、父を守りたいのに守れないジレンマ、金銭問題も切実で、一歩間違えれば闇に落ちるかもしれないような綱渡りな日々が続きました。
    認知症による問題行動(介護する側にとっての)があり介護がしづらい場合、今の世の中では行き場所が極めて限られていることも身を持ってわかりました。
    幸い、入院した認知症病棟も介護医療も、投薬は最小限に抑え(ノーワクチンok)後は父が環境に慣れるよう介護スタッフが親身になって努力をしてくれたので、父も昨年夏に亡くなるまで穏やかに暮らせましたが、認知症の問題行動を鎮静薬や睡眠薬の投与や、拘束で押さえつける認知症病棟の話しを実際に耳にする中、ただただラッキーなだけだったと思います。

    自分を省みても、親の老病死も介護の問題も、実際に当事者になるまではどこか他人事でピンときていませんでした。見たくないものに蓋をする今の風潮に染まっていた部分があったかも。いろいろと深く考えさせられそうな映画ですね。観るきっかけをくださりありがとうございました。







  • #4

    おてんば (月曜日, 10 4月 2023 10:03)

    グッビオのオオカミさん、いつも良い映画をご紹介いただき、ありがとうございます。
    私も高齢者の訪問介護系の仕事なので、興味深いです。近々観に行きますね。

  • #3

    枯れ尾花 (月曜日, 10 4月 2023 08:42)

    長崎県諫早市出身で元自衛隊に所属していたことのある野呂邦暢と いう小説家が「あることを行った時、それがやむを得ないことでなかったならば、それは悪である。」といったことを、ある本の中の一節で書かれていたことが、この物語のような出来事を見たり自らが身近に体験した時に頭を過りますね。

  • #2

    ツム (月曜日, 10 4月 2023 07:56)

    自分も昔、家に複数人の介護者がいた時期があり、本当に大変でした。変わってしまった肉親や無理解で口だけの周囲の大人たちに対して"あらゆる感情"を持っていました。
    今となっては現在の自分を形成する貴重な経験だったとも思えますが、当時あの状況があと少し長く続いていたら、終わっていなかったら(つまりは「死」がもっと遅かったら)、何がどうなっていてもおかしくありませんでした。
    自分は幸運だっただけ、という感情はいつも心にあります。でも、毎日の忙しさで忘れかけていました。この投稿で真摯な気持ちを少し思い出せました、有難うございます。

  • #1

    グッビオのオオカミ (月曜日, 10 4月 2023 07:29)

    掲載ありがとうございます!
    私の体験談はともかくとしても、長澤まさみ演じる検事・大友と松山ケンイチ演じる介護士・斯波の対話がとても緊張感がありまた興味深く見入ってしまいました。また不覚にも久しぶりに映画で落涙しかけました。
    この映画は生命至上主義とでも言うのか、"死"と"醜さ"を見ない様にする日本人の欺瞞と幼稚さを突き付ける様にも思いました。
    西部邁氏の自殺と弟子の自殺幇助の問題を思い出し、昨今の高齢者を守る為との美名で正当化されたコロナ禍の過剰な感染対策や半ば強制的なワクチン接種の原因も、日本人が死と老いと病を「他人事」とし、タブー視する事から話がこじれた様に思います。
    高齢者を殺した殺人犯、斯波の犯行は決して模範的ではありませんが、少なくとも自分達を安全圏に置きたがり、優等生の正義から一歩も歩み寄ろうとしない精神状態こそが、置き去りにされた他者を追い詰めている事、これを考えさせられました。