少子化問題、エマニュエルトッド『「老人支配」を断ち切れ』

 

投稿者:リカオンさん

  

 

文藝春秋2月号でE.トッドが日本の少子高齢化を解決するための提言をしていました。

フランスと日本との比較でよしりん辻説法にも通じる内容でした。

文藝春秋電子版では前半部分のみ無料で読むことができます。

 

文藝春秋 E.トッド「老人支配」を断ち切れ

https://bunshun.jp/bungeishunju/articles/h5189

 

後半も含めてかいつまんでポイントをあげてみます。

 

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日本が抱える諸問題の根源は、出生率の低さ。

 

人口減少を放置すると低成長になり、社会の新陳代謝がされにくく「老人支配」が進み、自己変革のダイナミズムを喪失する。

 

日本社会は武士が権力を掌握してから直系家族が定着。

 

直系家族は知識や技術の伝承に有利で近代の日本の成長に寄与したが、一旦確立すると自己変革する力が働かず、「老人支配」が進む。

 

現在日本は「核家族世帯」が主流だが、直系家族で確立した慣習が残り、少子化に影を落としている。

 

直系家族では、子育ての負担が女性にのしかかり、「キャリア」か「子供」かの二者択一を迫られ、結婚前から思い決断を迫られる。

 

「出産・育児」より「親の介護」が優先されるのは、「老人支配」。

 

さらに日本人は家族にも秩序と完璧さを求めるので、結婚が非常に思い決断になり、若い世代は結婚を「リスク」と捉えている。

 

結果的に家族を重視しすぎて家族を殺している不条理。

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一方フランスは核家族社会で、学生や法的に結婚しない人々でも子供を持つ人は多い。

子供を持ちながら仕事を続けることも比較的容易。

高等教育まで無償のため、教育費の心配はない。

 

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日本への提言。

(1)教育の完全無償化

(2)移民の受け入れ

 

移民の受け入れは心理的抵抗が根強いが、人口減少を放置すると先に経済的な危機が訪れる。

経済危機か移民受け入れの選択をいずれ迫られるのならば、移民の子供を教育して「日本人」にする方が、日本の子供をフランスのように無秩序に教育するより簡単では。

 

詳細を読みたい方は文藝春秋を購読ください。

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トッドの直系家族や核家族の分類が社会的な構造や行動に影響が出るという分析が正しいかどうかはわかりません。

 

しかし日本の老人支配や女性の負担の説明についてはあてはまっているように感じます。

 

フランスの学生でも子供を持つ人が多いという指摘で思い出されるのは、自分の学生の時の思い出です。

 

 

自分が在籍した国内の大学の研究室に、大学院生で結婚している女性研究者がいて、既にお子さんが二人いらっしゃいました。

 

学内の保育所に預けながら研究をしており、夫は大学の講師でした。

 

女性研究者は三人目を妊娠しながら、出産の前日まで研究活動をし、出産後しばらくしてすぐに研究室に戻りました。

 

研究しながら保育所を利用できるという恵まれた環境にあるとはいえ、ご夫婦だけで子育てしながら研究をしている姿に感心しました。

 

トッドが言う「(日本人は)秩序と完璧さをあまりにも追及しすぎる」を軽やかに超えている事例のように思いました。

 

 

年明け早々に岸田首相は異次元の少子化対策をすると明言しておりました。

 

日本の人口減少はもう自明の理とわかっていても、改善しようと努力すること自体が重要かと思います。

 

なぜなら、これまで老人のために若い世代、女性、子供を軽視する政策だったこの流れを逆向きにすることで、日本が活性化し、起こる経済危機緩和できるのではと思うからです。

 

移民の受け入れについては、以前小林先生が日系人のミス・ユニバース日本代表を擁護しておりましたが、日本人になりたいという方は受け入れてOKと私も思います。

 

 

(管理人カレーせんべいのコメント)  

 

リカオンさんの学生時代の友人の話にビックリしました!!

 

大学院生の女性が、大学の講師と結婚して子供3人作りながら、出産の前日まで研究室で活動してたって、そんなことができるの!?

 

と、まさに、このような「私の感覚」こそが、日本の少子化の一因かもしれないですね・・・。

 

少子化問題に関しては、「自分の体験」や「自分の感覚」を超えたところで語らないといけないのではないかと最近つくづく思います。

 

精進します!


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コメント: 9
  • #9

    グッビオのオオカミ (金曜日, 20 1月 2023 17:53)

    確かになあ、少子高齢化社会は弊害が大きすぎますからね。
    政治家もそこを意識した政策を打ち出した方が選挙に通りやすくてそちらに傾くでしょうし。
    移民は是々非々だと思います。まずは少子化というか子育てしやすい環境作りが急務でしょうね。
    少し余談ですが、統一協会などのカルトにはまる背景には核家族社会の「孤独な子育て」というものも、中にはあるのかも知れません。

  • #8

    二番煎じ (木曜日, 19 1月 2023 19:28)

    やっぱり愛子天皇だね。

  • #7

    潤峰 (水曜日, 18 1月 2023)

    選挙権と被選挙権の上限年齢を設定してはどうかと思います。
    シルバー民主主義の弊害
    政治家も票欲しさに、高齢者優遇の政策・意見を持ってしまう。
    今の年金受給者には、国会議員を選ぶ権利はないと思ってしまいます。


  • #6

    タロー.G (水曜日, 18 1月 2023 01:06)

    エマニュエル・ドット氏はロシアシンパなのでその点は評価できないのですが、少子高齢化対策で移民を受け入れるべきというのはこのコロナ騒動で日本人の劣化ぶりを毎日毎日目の当たりにしている私としては大賛成です。今週号のライジングでよしりん先生が危惧してますが、もはや在来種の日本人は滅びゆく種族なので、外来種で種の保存を図るしかないと思うようになりました。最近旅行系ユーチューバーのインド旅行動画を見ましたが、インド人の逞しさには今の日本人は絶対勝てないと思いました。彼らを1/10でも移民させてシン・日本人を産んで欲しいくらいです。https://youtu.be/ODOi9C-L-CU
    それはともかく、今月号の文藝春秋は興味のある記事が多いので早速読んでみます。

  • #5

    こびないナビ (火曜日, 17 1月 2023 08:02)

    東大主席の山口真由さんなどは、家族について大学で学んだようですが、学校秀才の限界を感じます。
    彼女のやりたいことは何かというと!皇統を絶って、日本人だけ子孫を残していけばよいという考えでしょうね。

    コロナ禍による少子化は日本国民とマスコミの責任。その点だけ、岸田総理を擁護したい。

    老人が目障りというのは理解できるのですが…問題は老人を守るがあまり権威主義が家庭にまで浸透してしまっている所では?
    儒教的な考えで老人を大切にすることを支持します。
    ただし、権威主義は排除すべき。

    正しい権威といえば皇室しかないです。

    少子化対策として、美智子さまのようになるように女子を教育するなどはどうでしょう?
    フランスではレディーとして女子を育てますが、日本では男尊女卑の考えを早期から植え付けます。

  • #4

    ねこだるま (火曜日, 17 1月 2023 06:57)

    「日本人は秩序と完璧さをあまりにも追及しすぎる」
    のは「型」を求めてそれを模倣することを理屈抜きでやれ、という「道」の伝統が大きいでしょうね。

    リカオンさん紹介の方は、研究者さんを小さい頃から目指していたのか、型に頼らず自分の頭で思考する訓練をだいぶされてきたのではないかと想像します。

  • #3

    リカオン (月曜日, 16 1月 2023 22:45)

    #1 sparkyさん
    高森先生がブログでも書かれていますが、
    https://www.gosen-dojo.com/blog/38386/
    同じ文藝春秋2月号に園部逸夫さんによる「女性天皇を認めよ」が掲載されており、文藝春秋は女性天皇を認めるか、両論併記ではないかと思います。

  • #2

    リカオン (月曜日, 16 1月 2023 22:34)

    取り上げてくださり、ありがとうございました!
    カレーせんべいさん、これで驚いていてはいけませんよ。
    彼女はもっとすごいのです。
    出産の前日、彼女は映画も見に行っているのです。
    彼女はお産に関する民俗学研究をしていて、医者に頼らず様々な民族や日本人はどうやってお産をしていたか調べていました。
    そして、3人目のお産は、アイヌの産婆さんに取り上げてもらおうと計画していて、それはアイヌの産婆さんの体調が悪くなったために中止になり、残念がっていました。
    多分3人目の出産については、産院でなくても自力で産める自信があったのだと思います。

    そして、私にお産についての民族資料や水中出産の本を貸してくれて、興味があったら彼女にコンタクトをとるように言いました。研究室の先輩方はクスクス笑いながら、研究対象にされるぞと私をからかいました。

    自身の出産や3人目の子を研究対象にするなんていいのだろうかとびっくりしたのですが、彼女の話を聞くと刺激になることが沢山ありました。1960年は日本で産婆が取り上げる自宅出産と病院出産がちょうど半々で、その後は病院出産が増えていくこと。自力で産む場合と病院で産む場合とで女性の産む姿勢が違う事。女性が自力で産むことはイニシアチブを医者に預けないことだという事を彼女から学びました。

  • #1

    sparky (月曜日, 16 1月 2023 22:29)

    このタイミングで「直系」という言葉に悪いイメージを付けてくれるなよ…さてはそれが狙いか文藝春秋?ってのは流石に穿ち過ぎか。